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またまたイーストウッド爺ちゃんは大変な傑作を残して行きました。映画館でしっかりと見なかった事が悔やまれる。
簡単なあらすじをwikipediaより転載。
朝鮮戦争の帰還兵でフォードの自動車工だった老人コワルスキーは、妻に先立たれ息子たちにも邪魔者扱いされつつ、日本車が台頭し東洋人の町となったデトロイトの通りで隠居暮らしを続けていた。外国人を毛嫌いしていた彼の家にヴィンテージカー、グラン・トリノを狙い、ギャングらにそそのかされた隣家のモン族の少年タオが忍び込むが、コワルスキーの構えたM1ガーランドの前に逃げ去る。
その後、なりゆきでタオの姉スーを不良達から救ったコワルスキーは彼ら家族の温かさに親しみを覚え、タオに一人前の男として仕事を与えてやろうとするが、それを快く思わないモン族のギャングらがタオにからみ、顛末を聞いて激昂したコワルスキーはギャングのメンバーに報復を加える。これに対してギャングらは一矢を報いようとタオの家に銃弾を乱射し、スーをレイプする。
グラン・トリノ - Wikipediaより
どこでも言っているようだけど、主人公のコワルスキー(クリント・イーストウッド)は、まさに古き良きアメリカを象徴している人物。そして、コワルスキーが愛情を注ぐ愛車グラン・トリノはアメリカそのもの。しかし、そんな彼は、自分の家族とは折り合いがつけられない頑固ものでもあり、それ故にとても孤独だ。そして、過去に自らが犯した過ちに苦悩し続けている。なんとも深読みしてしまう設定だ。そんな彼が、お隣のモン族の家族と心を通じ合わせ、少年タオに自らの価値観の骨子を伝えていく。
深読み要素は幾つもある。
コワルスキーは、自分の身の回り世話から、家や家具のメンテまで、しっかりとこなしている。しかし、東洋人の町になってしまったハイランドパークの町や家々は、荒廃しつつあり、もちろんそれをコワルスキーは快く思っていない。しかし、お隣と仲良くなってからは、少年タオに自らの家のメンテナンスをさせる。そして、そんなコワルスキーは近隣の住人達から、徐々に慕われていく。古き良きアメリカ的価値観の譲渡がコワルスキーと少年タオを通して行われている。自分の息子にではなく、移民の少年にだ。
折り合いをつける事ができない家族は、アメリカ人であるものの、コワルスキーの価値観を引き継いでいる訳ではない。息子は日本車のセールスマンで、トヨタのランドクルーザーに乗っている。また、もう一人の息子は、今の家を放棄して、老人ホームに移る事を進める。でも、コワルスキーは自分これまでの生き方や、住処を捨てる気なんてさらさらない。
こう書いてくると、コワルスキーが象徴する古き良きアメリカ万歳という話なりそうだが、そうでもない。コワルスキーは朝鮮戦争の時の記憶に苦しんでいるのだ。それはアメリカのこれまでの負の側面の象徴だろうと思う。
最後にイーストウッドは少年タオの為に全てを精算する為の決断を下す。その決断をどう判断するかは、もちろん観客に委ねらるが、それまでのストーリーを考慮するなら、これは何とも格好いい生き様としか言いようがない。
別に個人的には、古き良きアメリカの価値観を否定もしないし、肯定する訳でもない、それは最終的にはアメリカの問題だろうから。ただ、この映画から教訓を得るなら、それはプライドの守り方だろう。
コワルスキーは、自分が信じた価値観の為に最終的な責任を取る事で、未来にある種の想いを託した。その想いが少年タオにしっかりと受け継がれている事が示され、映画は幕を閉じる。なんとも素晴らしい終わり方だ。
おそらく現代の大人が子供を導くための本気の在り方がここにある。少なくとも、それをクリント・イーストウッドが見せてくれたのだ。感謝するぜ、爺っちゃん。
あと、Jamie Cullumのエンディング曲も素晴らしかった。これしかないなという感じ。早速、itunesストアで買っちまったよ。あとあと、イーストウッドの演技は相変わらず大根だけど、気にしない気にしない。ご本人曰く、これ以降は監督業に専念するとのことです。
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こないだTV放送を録画しておいたのを観た。いろいろと思うところがある映画でこれは観ておいて良かったな。と、気持ちが熱くなる映画だな。というのが素直な第一印象。
映画として、作品として客観的に評価するなら、新聞社内の大げさな対立、飛び交う罵詈雑言等は、一サラリーマンとして、どうしても大げさな演出に見えてしまう。。。でも、ここが作品の肝の一つでもあるだろうから、これはハズせないという事も分かる。墜落現場の再現も素晴らしいが、その画の力に頼らずに、あくまで新聞社内を舞台としてフォーカスした点は、とても素晴らしいと思う。
この映画は、一地方新聞社の新聞記者の戦いの記録だが、もうちょっと抽象化すると企業と企業戦士の戦いの構図であったりもする。
とにもかくにも、新聞記者たちの新聞に対する熱い想いが凄まじい。記者だけでなく、販売局や広告局といった、新聞社というイメージからすると裏方にあたりそうな社員達もそれぞれがそれぞれの仕事に相当なプライドをもっている。(それが正論かどうかは置いといても)
それぞれの社員が、ぞれぞれの想いをお互いにぶつけ合う2時間半は、猛烈なものだ。終盤の全社員入り乱れての大乱闘は、まさにお互いのプライドのぶつかり合いだが、仕事に対して何が人をそこまでさせるのか、考えさせられる事になる。。。
80年代という時代にあっては、企業戦士はみなあのようなプライドをもっていたのかもしれないし、取材した事件の大きさが、あそこまで記者達を昂揚させたのも分からない。仕事に対する熱い想いは、昔の方があったのではないかと、安易に結論を急ぐつもりもない。ただ、この熱い想いがなければ仕事は多分つまらないだろうなぁという漠とした想いは抱く事になるし、出てくる男達の大半は、(男の子目線でみると)大変かっこよく見える。公開は昨年だが、仕事に対して熱い想いを持ちきれない自分としては、いろいろメッセージを受け取らざるをえない。そしてこのメッセージは何かしら時代に対する批評性を備えている。
もう一つ。
この映画は、日航機事故をモチーフにしているが、これまで個人的に、この事件に大した興味は持っていなかった。当然と言えば、当然だが、現在28歳(1985年-当時4歳)の人間が、当時の記憶を鮮明にもっているハズもなく、「昔、スゲーでかい航空事故があったんだ。へぇ~」くらいの感想しかなかった。それも事故後何年経過というニュースで知るくらい。まあ僕と同じ世代なら、特別な事情がない限り、その程度の知識しかないだろう。
しかし、この映画の男たちの、昂揚/奔走ぶりもみて、やっぱこれは尋常な事件じゃないと思い、ネット上を巡回してみると、実に様々な情報がアーカイブされている事に気がつく。
日航機事故 - Wikipedia
日航機墜落事故 東京-大阪123便 新聞見出しに見る20年間の記録
これらの記録を読む/見る/聞くにつけ、愕然とさせられる情報が次から次へとつながっていく(リンクしていく)。まるで、失われてた24年分の記憶が自分の中に注入されていくような感覚だ。
最近は、ネットは終わりだ、もう先はない、ビジネスモデルが成熟してないネット等、ネットに対する批判的な論調があるが、少なくともアーカイバ(それはある意味では歴史記憶だ)としてのネットに勝るメディアは、今のところ他にはない。ある情報にたいする関連する情報のリンクによって、ユーザはその情報の全体像、それに対する人々の想い、考察、事実のディティールをあっと言う間に補完できる。もちろん、間違った情報や信憑性にかける情報もあるが、それは、ある程度他のリンクを回る事で、補完/訂正可能だ。
情報の相互リンクも強力だが、動画や音声、画像として当時の事件を体験する事が可能であるというのも、人類の歴史上かつてない事だ。ネット以前は、歴史の叙述の担当は基本的は文章だけだった、もちろん、テレビというメディアもあるが、テレビはアーカイバというよりも、進行形の現在にフォーカスしており(視点もリアルタイムであるが故に野次馬的興味で成立している・・・)、アーカイバとは言えない。
ネットでは、きっかけさえあれば、かなりの程度まで歴史に対する興味を能動的に深めていく事が出来る。現に、日航機事故に関して4時間もネットを巡回してしまった。(もちろん、すべての関連情報を見回った訳ではない。この後も書籍等でフォローアップしたい。)このアーカイバとしてネットの潜在能力は凄まじいものがある。
自分の知らない歴史を、この様に追認識できたのは大きな収穫だった。こういう体験はこれまでも何度もあるが、その度に「ああ、これは知っておいて良かったな」と思う。自分の興味で能動的に知る歴史は、多くの場合信じられない位多くの事を学ばせてくれる。時には、少なからず人生観の変更を余儀なくもされる。
僕の最も愛読する作家である小林秀雄は「歴史とは自己である」と書いていた気がする(どうしても出典が思い出せない。。。すいません。知っている人は教えて下さい。。。)が、それは、ある意味で、自分の過去をふりかえる様に、歴史を読まねばだめだという意味でもある。それは今でもそう思う。また、そういう風に学ぶ時の歴史以上に面白いものもそうそうない。
多くの人にはとって歴史は、基本的に他人の過去に過ぎない。それ故に、あっという間忘れ去れる。だが、決して忘れない人々もかならずいて、ネット上ではきっと今日もそういう想いを持った人たちの記憶がアーカイブされている。そして、その過去を共有しようと思えば可能な空間が開かれているという事実は、情報技術がもたらした非常に大きな成果だと実感させられる。
と、またしても映画からは話が逸れたが、個人的にいろいろなきっかけを与えてくれる映画であったので、取り上げてみた。
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ある夫婦の10年間を90年代を背景に描いたというと、相当に湿っぽい作品だと思われるかもしれないが、その通りで、相当に湿っぽい作品だった。いちいちディティールが湿っぽい。でも、こういう映画が作れる監督がいるんだという事に、まず映画好きとしては感謝しなきゃならん。過去を忘れない。過去を水に流さないで、見つめる事で未来に繋げたい。そういう監督の想いがちゃんと映画に焼きついている。こういうのが演出だと思う。
ある夫婦の10年と、90年代という時代を丁寧に重ねていくうちに、物語が徐々にある振幅をもっていく訴え始める。子供を亡くし、うつになった妻の精神的な再生とその夫を描いているだけなんだけど、ちゃんと人間が描けている。こういうのが脚本だと思う。
主演のリリー・フランキーと木村多江が素晴らしかった。とくにリリー・フランキーのお陰で、映画がダメになりそうな危うい部分が、絶妙に救われている。これは多分職業俳優には出来ない。
監督も明言しているが、この映画はバブル以降の社会を背景としている。法廷画家である夫のカナオは、既に風化してしまった事件を写す。妻の翔子の兄夫婦には、バブル経済の影がちゃんと描かれている。そういう背景があるからこそ、この夫婦の10年の陰影が深くなってもいる。皆が体験した10年を、この夫婦も乗り越えたのだという説得力になっている。
このブログでは、何度もバブル、バブルと言ってきたが、別に何かを過去のせいにして、今を正当化したい訳ではないし、そんなことをしたところでなんにもならないことは分かっている。だが、バブルというのは今に至るひとつの分岐点だったとやはり思うし、その地点で日本人はある変化を遂げたことはまず間違いないと思う。橋本治の言葉を借りれば、「世の中の人間のあり方を規定していたものが消滅してしまった」という事になる。
その消滅は、この映画では妻の翔子が子供を亡くすというメタファーとして表現されている。翔子の精神的再生のターニングポイントとなる嵐の夜のシーンで、子供を亡くしてしまったことで自分を責め続けてきた翔子に対して、夫のカナオは「子供ことはいつも思い出してあげればいいじゃん。忘れないようにしてあげればいいんじゃないの」と言う。そして、その夜から翔子の人生の歯車はまた回り始める。
「世の中の人間のあり方を規定していたものが消滅してしまった」なら、やはりその時に戻ってみるしかないのだ。そして、その時の事を検証して、そこから何かを学び、先に進むしか道はない。それがまっとうな考え方というもんだし、それが当たり前の考え方というもんだ。土地は転がして儲ける資産ではなく、人間の生活が乗っかっているもんだという事を思い出す。経済が生活に従属していた、そいうところまで、多分、戻る必要がある。
この映画のメッセージは、過去を曖昧にして、受け止めないでいることはもう辞めようよという事でもあると思うし。
後半になると、この映画で初めて音楽が流れ始める。それは、この夫婦の人生が良き方向に向かい始める予兆でもあり、二人の、二人自身のあり方を、お互いで補完して規定していく過程でもある。
当然、背景となる時代は相変わらず流れているし、凶悪な事件も続いている。兄夫婦も相変わらずだ。ただ、この夫婦の間には別の風が流れて、不思議と時代と呼応しなくなっていく。それが監督が描く希望だと感じさせる。
個人的には「おくりびと」よりも良かった。
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