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経済成長って何で必要なんだろう? (SYNODOS READINGS) 経済成長って何で必要なんだろう? (SYNODOS READINGS)

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経済成長ってなんで必要なんだろう?

解答.

  経済成長なしには失業の問題を解決することは出来ません。経済成長なしには貧困対策に割く予算がありません。経済成長なしには、財政・年金・福祉に至るあらゆるシステムを早急に、そして抜本的に変えなければならなくなります。システムの抜本改革には膨大な手間暇がかかります・・・・・日本にはもうそれだけに時間がのこされていないかもしれません。さらには、改革を一歩間違えると、その先には悲惨な未来が待ち受けています。
  最近では米国発の世界不況を受けて経済成長否定論が猖獗をきわめつつあります。経済成長の負の側面をとりあげてそれを批判するのは非常に簡単な事です。しかしながら高度経済成長以前と以降を見比べればわかるとおり、我々の生活を向上させ、不安をとりのぞいてくれた原動力はいつも経済成長でした。その一方で、平均1%での経済成長が続いた90年代後半から現代に至るまで、我々の生活がいかに苦しく、いかに不安なもであったのかを忘れてはならないのです。
  何も再び高度経済成長をと主張するつもりはありません。それはキャッチアップ型の成長を終えて久しい「先進国日本」には土台不可能なことです。しかし、通常時2%、好況期に3%の実質成長が達成出来れば、現在の日本の多くの問題を解決出来ることを覚えておいてほしいのです。

『経済成長ってなんで必要なんだろう?』 p289 あとがき より

という事です。

経済学者の本は、数冊しか読んだことないけど、これは好感がもてた。理論経済学ではなく、政策経済学というのが著者の立場で、経済学者は一貫して、一介の技術屋として政策の経済的な妥当性を検証するのみ。というスタンスも一貫している。

現状の日本の失業問題について、簡単な例えを言うと、椅子取りゲームをやっていて、椅子は少なくて、参加者は椅子の数よりも多くなっているのが現在の日本の状態で、それが社会問題として表出してしまっている。それを『自己責任論』でかたつけるのは簡単だけど、まずは、椅子を増やす方を考えようよ。という至極まっとうな考え。

もちろん、誰にだって、「あんときもうすこし頑張っていればな・・・」といううしろめたさはあるから、自己責任論は強力だ。それに、確かに努力した人の方が、努力を放棄した人より報われる。個人単位で言えば、努力した方が失業率は下げられる。それも当然な正論。だから、若者が胸をはって「社会のせいだ」と主張するのは、かなり辛いところがある。。。この国では自己責任論が暗黙に受け入れられている。

でも、椅子が十分に用意されていなければ、必ずあぶれる人はいる。仕事がないなら自分で作ればいいという考え方も同じ事。やる気の有無にかかわらず、需要がなければ、仕事はない。だから自己責任論は、ミクロでは正しいけど、マクロでは間違っている。

というような、技術屋としての著者の考え方は、実効性の根拠をしめしてくれないマニュフェストなんぞよりもすっきりと納得出来るものが多い。

で、技術屋であるから、経済を回す方のエンジニアリングは頑張れるけど、その中で生きる心の問題の方は、人文の方が考えるべきところというとこまで割り切っている。というか、人文はそこをしっかりやれよ!と言いたげ。

でも、それはそう思う。論壇で経済についての話になると、途端に抽象度があがって、空論めいて、もうアホみたいだ。バブルの時を思い出して、あんだけ日本がお金で浮かれていた時に、お前ら何やってたんだよ。と。

人文に出来るのは、経済(お金)とは別の所で人間のプライド(橋本治流に言えば、人間のあり方を規定しているもの)を守るにはどうすれば?と考える事だろうと。

当の経済学者から、既にそういう切り分けされちゃって、ああもう状況はそういうとこまで来てんだと実感した。頑張れ人文。頑張れ思想。頑張れ論壇誌。。。。
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これはある意味めちゃめちゃ怖い話。

この20世紀映画史上に燦然と輝く超有名カップルが、神経症的に不幸に突き進んでいくのだから凄みが違う。監督は『アメリカン・ビューティー』のサム・メンデスなんだが、この監督は、アメリカ郊外族の悪夢的なものに一貫して興味があるのかしらん。でもあれも、10年前の映画か。。。スティーブン・キングもそうだけど、アメリカ郊外の悪夢ってモチーフは、やっぱ実際の郊外族からすると、かなりリアルな悪夢なんだろうとは思う。

この夫婦は、理想郷とでも言わんばかりに描かれる閑静なレボリューショナリー・ロードに引っ越してくるわけだが、自分たちは特別で、もっと幸福になれるし、自己実現する事こそ人生という妄想(というかケイト・ウィンスレットのそれは完全に狂気)にとりつかれている。自分の今の人生は、本来の自分には相応しくないと信じて疑わない。そして、周りもあの夫婦は特別だと煽る。

まあ、もっと今風かつ日本風に言えばかなり深刻な『自分探し』病に陥っている妻を現実的な夫がかろうじて支えるのだが。。。という所で物語が展開していく。

とかく、ラストシーンの皮肉っぷりも凄い。それまでのドラマはこのシーンの前振りですかと思わせる程。

サバービア・ムービー
という位置づけからは、ちょっとズレるが、十分そういう視点は描かれる。サバービア達が抱える本質的な空虚感をこれ程丁寧に描いた作品はない。

でも、こういうサバービアの恐怖ってのは、意外とままならい問題だったりする。この夫婦に関して言えば、それは自分達は特別だという傲慢さの自業自得に近いので、ちょっと違うが、基本的には空虚さを埋めるのは人間関係しかないという結論は同じ。そう、この妻には家以外に日常的な人間関係が存在しないのが問題なのだ。だから、ありとあらゆる感情が夫に集中してしまう。これでは、どんなにお互いに気持ちがあっても上手く訳がない。一人の人間の感情をずっと同じ人間にぶつけるというのはフェアな人間関係ではないからね。

でも、これは専業主婦なら何とかさばかなければならない問題でもある。昔の日本とか(あと今の田舎でも多少)だと、共同体って残っていたけど、現代人が求めるのはそういう濃密で、強制的な関係性ではないのは胸に手をあてればわかるよね、田舎者の皆さん(俺含)。でも、都会は都会で、公園デビューとかしたい訳で、やっぱ人間関係が家しかないってのも、それはそれでツライ。で、そうなると、自分の好きな人と、好きな時にという関係性が適度でいいよね。という態度になるけど、これは人としてあまりにも傲慢な態度とも言えなくもない訳で、やっぱままならない問題ですね。というあたりが、現代の現状。

でそうなると、この夫婦の私たちは特別であるべしという狂気の正体もなんとはなしに見える。そうでも思わないと空虚な現実に耐えられない訳だから。その一つのソリューションが現代だとネットだったりするかもしれないけど、これもそんなに上手くいっていない。
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そろそろ『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』について書かねばなるまいと思う。

各所でいろいろと賛否両論ある様だが、個人的な感想は、すごく良くできた映画だという事。画は間違いなく現時点の最高の水準。ストーリーは2009年という文脈を考えれば十分訴える所はもっていたと思う。まあ、なにしろ映像の躍動感が凄くて、画の動きを目で追っかけているだけで気持ちいいという感覚になる。こういうプリミティブな画が動くだけで面白いという感覚は、アニメーションという表現がもつ大きな特徴だろうけど、それをここまで感じたのは初めてだった。

例えば、「崖の上のポニョ」とかもポニョが波の上を疾走するシーンとか、宮崎駿の真骨頂だろうけど、そういうのは昔の作品(ナウシカとかラピュタとかトトロ)のがもっと沢山あったよな。と思う。※1

※1ポニョはこないだ初めてDVD借りてみたけど、率直に言って良くわからない。。。宮崎駿は迷走している気がしてならない。のでブログでも言及する気にもなれず。。。

ネット各所ではストーリーについての賛否が多いので、まず技術的な視点から話をはじめてみたのだけど、そういう画の躍動感が出せるのは明らかに高い技術力のなせる技なわけで、それだけでも1800円出す価値はあるよなと思う。あとリニューアルされた使徒の造形とかもも、テレビ版に比べても、ものすごくセクシャルになっている。そういう現場力が垣間見れた。

ものづくりの姿勢という意味でも、(第一作目からそうだけど)制作/配給/宣伝を全部やっちまうというのは、凄い事である。もちろん、大人の事情という制約はあれども、作品が観客に届くとこまで全部責任をもって絡むというのは、プロダクトとして責任を持とうとしているのだろう。逆に言えば、現場の人間が納得するものしか作らないという決意表明とも受け止められる。自分も、一応ものづくりに携わる人間だけど、そういうスタンスは見習ねばなるまい。そして、時代は確実に現場が納得して作ったものしか売れなくなってきている。これは結構大きな問題に拡散してしまうので、これ以上は追求しないけど、かなり大事な問題である気がする。

で、肝心のストーリーについてだけど、いろんな人が言うほど、骨格部分はテレビ版と変わってないよなというのが印象。ただ、キャラクター達の性格は明らかに2009年という文脈で調整されているし、物語よりも、物語が進行する世界を丁寧に描こうとしている。(第3新東京市の町並みの長回しとかそうだろう。)

キャラクターの調整という意味で最も顕著なのは、あのメガネ。このまったくヘタレな部分がない清々しさと強さをもっているキャラクターは1995年のテレビ版では全く存在し得なかっただろうと思う。次回作ではきっと鍵を握るキャラなんだろうと思う。

他のキャラクター達も全般的に人間的に非常に強く、かつ、素直になっている。全然ドロドロしていない。で、多分こういうキャラクター造形は、現代のシンジくん達に勇気を与えるものなんだろうと思う。そのメッセージ性は確実にあって、最後の戦闘シーンにそれが顕著だった。これは演出としてはドンピシャだと思う。当時リアルシンジくん世代(そう、14歳という中二病の真最中だった)だった自分からすると、なかなか複雑な気持ちにはなるけれども。。。まあでも、2009年という文脈でみれば、勇気をもらう画であることは間違いない。

全4部作なので、今の時点ではこんな感想しかないけど、確かにめちゃくちゃ興行収入があがっているのが納得出来る作品だった。次回作に期待。

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Wilco

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Wilco7枚目のアルバム。良い。
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小熊 英二

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最近個人的に人気急上昇の小熊英二氏の著作。
やはりこういう実直な研究スタイルの学者はいいと思う。

このよりみりちパンセシリーズは、
対象読者が中高生くらいだからとても読みやすい。

内容は非常に良くまとまっている。
明治以降の日本の精神史がとても面白く示唆的に概観できる。

日本という国がどうしてこうなったのか?
その背景が非常に上手く解説されているし、
これから進むべき道が暗に示されている。

特に憲法九条とアメリカやアジアとの関係の説明などは、
これ以上わかりやすく本質を突いた解説は他にないと思う。
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