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ショーン・ペンが原作(↓こちら)に感動して、
映画化権獲得に10年という歳月を費やしたしそうな。
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原作者のジョン・クラカワーは、
登山家であり、ノンフィクション作家。
で、アメリカ社会が抱える病理を描くのが上手い人だったりもする。
だから、この『荒野へ』も読み解くのが結構難しい。。。
映画のキャッチコピーは、
「そして僕は歩いていく、まだ見ぬ自分と出会うために」
「自分をぶっこわす旅」
という感じ。自分探しを匂わせる。。。
主人公のクリストファー・マッカンドレスは、大学を優秀な成績で卒業するも、貯金を寄付し、クレジットカードを切捨て、車を乗り捨て札を燃やし、家族にも何も告げず、本当の自由を求めアラスカへ旅に出る。
彼は、徹底して消費社会/物質主義を拒絶する。そのストイックさは相当異常で、ヒッピーですら彼のアラスカ行きを止めたりする程。彼をそれほどまでに突き動かすものは何なのか。。。
消費社会/物質主義の拒絶のというのは、アメリカ文学の系譜としてそれなり根拠があるもので、ジャック・ロンドンとか、古くはヘンリー・デイヴィッド・ソローが有名。特に、ソローの『森の生活』は、アメリカ文学史上に結構大きな影響を与えた作品。
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どうして、こういった強烈な消費社会/物質主義の拒絶がアメリカ文学の一つの系譜として存在しているかと言うと、アメリカには歴史がないから。
歴史がない新しい国であるにも関わらず、ご存知のようにいろんな意味で今世界No.1の国でもあるアメリカを支えてきたのは、まさしく消費社会/物質主義そのもの。
また、アメリカを象徴する言葉と言えば『自由』だが、それはある意味で、歴史の呪縛がないという事でもある。移民が支えてきた国であるが故に、悪く言えば、根無し草の集まりでもあり、国民が結束する根拠も弱い。国民が共同の歴史的記憶を持たないというのは、共同体を作り上げるうえでは結構致命的な事なのだ。だから、彼らの結束の根拠は『自由』にならざるを得ないし、自国がドラマチックな歴史を持つこと対する強烈な渇望は今でもある。(特に歴史の長いヨーロッパに対する強烈なコンプレックスは確実にある)
そんな、ある意味で精神的に脆弱なアメリカが、ここまでのしあがってきたは、消費社会/物質主義のおかげに他ならない。だから、その消費社会/物質主義を抜きでアメリカが自国を考えるとき、他になにも残らないのではないか。。。という恐怖感は、常に向かい合わざるをえない問題。で、それに対するカウンターとしての強烈な精神主義への傾倒があったりもする。
その表出が、ソローの『森の生活』だったり、大きな流れとしては60年代のカウンターカルチャーだったりもする。アメリカ文学至上の伝説的存在でもあるJ・D・サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて(The Catcher in the Rye)』でも、主人公のホールデンが、何もかもから離れて森で生活したいというガールフレンドに言うシーンがある。消費社会/物質主義に対する反動としての純粋な精神を求める傾向は未だ根強い。
という所で、話が映画からはだいぶそれたけど、消費社会/物質主義の拒絶というのがアメリカでは結構痛切なテーマだったりするという事がいいたい。
だから、この映画の主人公のクリストファーの消費社会/物質主義の拒絶をそのまま体言した様な行動は、アメリカの精神の出来れば一番触れられたくない部分、アメリカが抱える病理そのものを強烈に刺激する。のではないかと思う。
だから、プロモーションしていた自分探しとかはちょっと毛色が違う話で、もうちょっと複雑な背景をもつお話なのだ。
で、消費社会/物質主義を離れて、どんどん自然に入っていく主人公のクリストファーなのだが、場所は消費社会/物質主義を遠く離れたものの、心の方はなかなかそれに追いついていかない。なんせ、誰もいない荒野に出て、自給自足の狩猟・採集生活をはじめなきゃならないに、のんきに本を読んだり、日記をつけたりしているんである。
目の前に雄大な自然が広がっているにも関わらず、あんまりそれに心奪われている風でもない。それよりも過去の自分のことをクヨクヨ振り返っては日記をつけている。狩で捕まえた獲物を燻製にするのに失敗して、動物の命を無駄にしてまったことを激しく後悔したりする。こういう陳腐な博愛主義なんてまさに消費社会/物質主義が出所なのに。。。
結局のところ、自然の中で一人で生きる為には、生ぬるい考えを捨てて、生きることに対して全力で知恵を絞って、時には動物の様に残酷に徹しなければならないのに、彼にはそれが出来ないのだ。
そんな風に、実は消費社会/物質主義から離れようとはしたもの、アラスカの大自然の中にまで来ても、そこから離れることが出来ない様を描いている訳だ。だから、ラストで文明社会に戻れないことが明らかになった時に、彼はどうしようもなくうろたえてしまう。。。
この映画はテーマは、そいう意味でかなりアイロニカル、かつ、救い様がなかったりする。かなりセンセーショナルなメッセージ持った映画だったりもする訳だ。
とまあ一筋縄では読み解けない映画だけれども、結構考えさせられる作品だった。
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