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物語論で読む村上春樹と宮崎駿  ――構造しかない日本 (角川oneテーマ21) 物語論で読む村上春樹と宮崎駿 ――構造しかない日本 (角川oneテーマ21)

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とりあえず、文章が読みにくいけれども。。。。

まあ、それはよしとして、荒っぽくまとめると、村上春樹と宮崎駿の作品には、物語の構造しかなく、それ故に世界的な評価を得ていると分析している。構造というのは、神話の構造そのものだったり、文学理論とかやると出てくるロシア・フォルマリズムとかの話です。まあ、細かい分析は、同書を読めば丁寧に解説してある。納得出来る部分もあります。

で、

村上春樹と宮崎駿を著者(大塚英志)は評価しないよというのが結論である。

誰かの与えた物語によって自己実現した気になってしまうことはいいかげんやめて「近代的個人」に至る別のツールを選択すればいい。
  物語では現実は解決しないのに、物語のように現実を再構成して、そして理解し解決しようとしているのが9・11後のぼくが「再物語化した」と呼ぶところの世界である。
  物語批判は物語の外にこそ向けられるべきであり、しかも物語ではない因果律によって世界を理解し、記述していくかについては本当はたくさんの思想や試みが書籍として世界中に今もある。
  物語などは所詮はただの消費財であるべきだ、とぼくがいいつづけるのはそれ故である。
  少なくとも「構造しかない」物語にこの国全体が「とてつもない日本」という空虚な意味を補填し、日本が世界に届いたと思い込むことだけは止めた方がいい。

『物語論で読む 村上春樹と宮崎駿 ― 構造しかない日本』 p242-243

「誰かに与えた物語によって自己実現した気になって」いるような日本人がどれくらいかは知らないし、「近代的個人」を目指すべきなのかは良くわからないが、「物語ではない因果律によって世界を理解」できると著者は本気で思っているのだろうか?因果律というのは、物語を拒否した世界の理解の仕方かもしれないが、それは人間にとってそれ程有効な方法論だろうか?例えば、みんなが因果律で世界を理解しようとしたとして、そんな世界にぼくは住みたくないですね。。。60年前にこんなことを言っているおじさんがいました。

  諸行無常という言葉も誤解されている様です。現代人だから誤解するのではない、昔から誤解されていた。平家にある様に「おごれる人も久しからず、唯春の夜の夢の如し」そいう風に、つまり「盛者必衰のことわりを示す」ものと誤解されて来た。太田道灌が未だ若い頃、何事につけ心おごれる様があったのを、父親が苦が苦しく思い、おごれる人も久しからず、と書いて与えたところが、道灌は、早速筆をとって、横に、おごらざる人も久しからず、と書いたという逸話があります。
  この逸話は、次様な事を語っている。因果の理法は、自然界の出来事のみらず、人間の幸不幸の隅々まで滲透しているが、人間については何事も知らぬ。常無しとは又、心なしという事であって、全く心ない理法というものを、人間の心が受容れる事はまことに難しい事である、そういう事を語っております。私達の心の弱さは、この非人間的な理法を知らず知らずにうちに、人間的に解釈せざるを得ない。因果話や宿命論が現れるのも、そういう理由によるものと思われます。言うまでもなく、近代の科学は、そんな曖昧な解釈を許さない。因果律は、その全く非人間的な純粋な姿で、私達の上に君臨している。という事は、私達がまともに見る事が出来ぬものから、目を外らして了ったという事だ。因果律という、抽象的な図式を、何処か浮世の風の当たらぬところに、しまいこんで了ったという事です。これは私達の心が強くなったという事でしょうか。それとも、人間の心の弱さの反面を語るものだろうか。いずれにせよ、ここに、自然の世界と価値の世界との分離が現れた。近代文明は、この分離によって進歩した事に間違いはないが、やがて私達は、この分離に悩まねばならぬ仕儀に立ち到った。現代の苦痛に満ちた文学や哲学は、明らかにその事を語っているのであります。

『栗の樹』 ~私の人生観~ p300

この後に、因果律から立ち上がった釈迦の話が続く訳だけど、因果律で世界を理解するなんて事が人間に出来ると思っているのでしょうか?著者は。。。

まあ、そんな60年前の先人の言葉を引き合いに出さなくても、自分の近親者の死を因果律で理解する人がいるだろうか。ちょっと想像力を働かせれば分かることだと思う。「物語などは所詮はただの消費財であるべきだ」など本気で言っているとしたら、ちょっと首を傾げざるを得ないけどな。。。

僕の個人的な評価は置いといても、村上春樹と宮崎駿の物語に救われている人は、かなり沢山いると思うし、物語が何も解決しないとしてもそれが本当に意味を持たないかどうかわからないでしょう?と思うけど。それに、人の自我は、確かに与えられた物語でも形成されるけど、それ以外のファクターも当然あるわけで、そんな簡単に自己実現なんてしないでしょうよ。と思う。

著者の細かい分析とか解釈は凄いし、確かに面白いんだけど、根本の処でこういう事を本気で書いているとしたら、冗談だとしても哀しすぎる。少なくとも世界に届けたくない言説はこっちだよ。こっち。
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利益は企業存続の条件であって目的ではない

ドラッカーの言葉である。

僕は誤解していた様だ。利益は企業の目的だと思っていた。思い込もうとしていた。資本主義というパラダイムにおいては、それは人を強力に説得するだろう。でも、違うのだ。やっぱり。だって、私たちはお金を稼ぐ為に生きている訳ではない、生きるためにお金を稼いでいる。この違いは重大だ。重大だと思えないないならそれもいい。それは資本主義だろうが何だろうが、変わらない事だ。人間だろうが、企業だろうが同じ事だ。資本主義は現代のドグマかもしれないけれど、ドグマを信じる信じないの自由は自分の手の中にある。

もちろん、利益は条件だ。条件を守る事は重要だし、極めて難しい。条件を守る事にやりがいを感じる事も可能な程度には難しい。それも分かる。だが、それは易い事でもある。生きるという事に比べれは。遙かに。

企業にとって「生きる」とは何か?それは社会貢献だ。大真面目に社会貢献だといいたい。別に斜に構えているわけでもないし、冗談でもない。社会貢献じゃないなら、「人の為に何かする」でもいいだろう。人は人の中でしか生きられない。人類最後の一人という言葉に意味がないというのと同じ意味で、人は一人でも生きるが、活きない。

いつだって、人は人を救う為に生きるだろう。利害関係が存在しない人の為にすら生きるだろう。そこからしか物語は始まらないだろう。隠れているはいるが、そういう人はやっぱり居るだろう。

思想が混乱して、誰も彼もが迷っていると言われます。そういう時には、又、人間らしからぬ行為が合理的な実践力と見えたり、簡単すぎる観念が、信念を語る様に思われたりする。けれども、ジャアナリズムを過信しますまい。ジャアナリズムは、屡々現実の文化に巧まれた一種の戯画である。思想のモデルを決して外部に求めまいと自分自身に誓った人、平和という様な空漠たる観念の為に働くのではない、働く事が平和なのであり、働く工夫からきた生きた平和の思想が生まれるのであると確信した人。そういう風に働いてみて、自分の精通してる道こそもっも困難な道だと悟った人。そういう人々は隠れてはいるが到る処にいるに違いない。私はそれを信じます。

『栗の樹』~私の人生観~ p349 - 350

仕事をする事がどんどん困難にならない様なら嘘だという、でもそういう風にするしかないという、そういう風に確信せざるを得ない。そういう人はいるだろう。

話は変わる。

9・11から8年たった。もう8年かとも思うし、まだ8年かとも思うけど、テレビの深夜番組をつけ、日本の政権は変わり、約252633600秒の時が流れたと思う。あの日を境に世界は変わっただろうか?よりよい方向へ進んだだろうか?悪い方向へ進んできたんだろうか?よくわからない。ほんとによくわからない。少なくとも、自分は何かを学んだんだろうか?よくわからない。平和とか戦争とかそいう観念を捏ねくり回して考えてみたところで意味はない。正義とか悪とか、そういうのでもない。歴史には歴史の摂理というものがあるし、8年はその摂理が働く程長い時間ではないのかもしれない。今を生きている人の世代的な記憶は少しずつ薄れている。地下鉄サリン事件の記憶がやはり薄れた様に、少しずつ。でも薄れない人もいる。多分まだ問題は何も解決していない。

話は変わる。どんどん変わる。

買っておいた、Blue-rayの『チェ28歳の革命 / チェ 39歳別れの手紙』を見返す。特典のソダーバーグのインタビューが面白かった。

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その後、文化系トークラジオのチェ特集も聞いた。ソーダバーグがこんな事言ってた。

※「2009年のチェ・ゲバラ」Part3をダウンロードする ( mp3 23'46'')

重要なのは何かに反対するだけでは足りないという事です。その代わりにこうしたい、という代替案が必要だと思います。そして、その代替案は思いつきなどではなく、じっくり考え抜いたもの、これならなんとか機能するだろうという現実的なものでなくてはなりません。反対の為の反対では何かを成し遂げることはないのです。今の世の中には、何かに対して声を上げ、そして、その声を簡単に他人に聞かせることが出来る手段があります。しかし、その言い分がまともに取り上げられるだけの価値があるものなのかどうか、そこを意識する必要があります。若い人達は何かに対して、Noという衝動が強い一方、Yesという気持ちはあまりありません。若い人達のエネルギーが無駄に終わらず、生産的になるようよく考えて欲しいと思います。

19:51 ~ 20:54秒あたり


日本国民は今回の選挙でNOといった。だから、多分今回の選挙は無意味だろう。民主が駄目なら、国民はまたNOというだろう。その次も多分NOというだろう。今のこの国は、現状への不満を言う事でしか政治的な言説が成立しなくなっている。そんな事をやっているうちは、多分何も変わらないよ。NOと言うなんて簡単な事だ。だが何をYESといえるだろう?そう思えたならもう少し結果は違っていたんじゃないかな。青臭いかな。。。まあ、でも民主を選んだ事実はもう変わらないんだから、それはそれなりの未来を受け入れるしかないわな。

そんな風にとりとめもなく考える9月。チェは天国(多分そっちだよね)で何を思っているのか。。。
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春号は読んだので、夏号つっても、
夏も終わりです。秋号は10月20日発売!

春号に比べると、目玉的なものはないけれど、まあテーマが「箱」ですからね。
箱と言えば、個人的にはまず、安部公房の『箱男』が浮かぶなぁ。。。

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一番面白かったというか、素敵な話は、なんといってもリチャード・パワーズの『七番目の出来事』。これは、久しぶりに読んだ心がキューとなる感じの小説でした。ヒロインの生き方とかキャラクターがなんとも堪らないです。こういう女性はカワイイと思います。はい。素敵ですね。そして偶にはこういう小説もいいですね。はい。僕は、こういう負けると分かっていながらも闘い続ける人をどうしようもなく応援したくなります。特に女性。特に最近。

そういえば、パワーズの『われらが歌う時(上・下)』は読まねばと思いつつ買っていない。。。上下巻で、約7000円だからね。。。それに古川日出男の『聖家族』ですらまだ読み終わってないし、最近長い小説を集中して読み通す時間と集中力がもてないなぁ。。。でも、こんな素敵な短編読むと、買いたくなってくるな。

あと、気になったのはヘミングウェイの『in our time』かな。
柴田元幸の解説。

戦争や闘牛の一場面を印象的にスケッチした文章にも、また独自の魅力がある。誰もがなんとなく「文学的」と思ってきたような書き方をいっさい排して書こうとしている若きヘミングウェイの意欲は、これらの小品からいっそう生々しく伝わってくる。

『monkey Business 2009 Summer vol.6 箱号』  - in our timeについて p202-p203

ヘミングウェイは、『日はまた昇る』とか『武器よさらば』とか読んで、「ケッ」とか、「ふーんハードボイルドねぇ。。。」とか斜に構えてたけど(素直じゃない。よくない性格だ。)、素直にこの超短編を読んでみると、柴田元幸さんの言う様に、既存の文学に抗うようにして、自らのスタイルを確立しようとしていたヘミングウェイのエネルギーと不安が確かに伝わってくる気もして、なんかグッとくる。もちろん、それは内容とはあんまり関係ないけど、それが作中の若者たちの持つ不安と上手くシンクロしている。この短編を一生懸命書いているヘミングウェイを想っても、またグッとくる。
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素敵な逸話を思い出した。
 
  僕の好きなポプシーの話は、グッドマン(俺注・ベニー・グッドマンの事ですよ)のバンド・ボーイとして、プリンストンに仕事にいったときのやつだ。彼はバンドスタンドをセットアップして、ベニーの楽屋でいろんな用意をしていたのだが、ふと気がつくとベニーのためにいつも持ち歩いている煙草の箱の中には、一本しか煙草が残っていなかった。慌てて外に出て、どこかで煙草が買えないものか捜し回ったのだが、そのへんで目につくものといえば、並木道に沿って連なる大学の建物だけだ。いったいどっちに向かえば煙草屋があるのか見当もつかない。
  「そのとき白髪のじいさんが一人こっちに歩いてきたんだ」とポプシーは言った。「よれよれのズボンにスウェット・シャツという恰好で、髪はぼさぼさだった。僕は走っていって、どこに行けば煙草が買えますかねと訊いたんだ。じいさんは僕の身なりに興味をもったようだった。僕はすごくヒップな恰好をしていたからね。黄色のカーディガン・ジャケットにペグド・パンツ、それにベレー帽さ。彼は僕に服の事を尋ね、何処からきたのかと訊いた。まるで火星から来た人間に会ったみたいな感じだったね。
  僕は適当にじいさんをあしらった。そしてちょっと急いでいるんだよ、ベニーの為に煙草を買わなくちゃならないんだと言った。やっとじいさんは教えてくれた、こっちに二ブロック行くとキャンディー・ストアがあって、煙草ならそこで買えるよってね。僕は大急ぎで煙草を買って戻ってきた。すると演奏会場の前にいた若いのの一人が、あんたアインシュタイン教授とあそこで何か話していたけど、何の話をしていたんですかと僕に尋ねた。アインシュタインだって!僕はそのじいさんを用務員か何かだと思っていたんだ。考えてみなよ、ポプシー・ランドルフがアルバート・アインシュタインと話をするなんてね!そりゃよさようなじいさんには見えたけどさ、やれやれ、なんとアインシュタインだって!」

『さよらなバードランド』  ポプシー・ランドルフ  p258-259
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今更春号でもないけれど、まあ面白かったので、
大きな書店ならきっとバックナンバーがあるでしょう。

対話号でなんと言っても注目なのは、村上春樹への70ページ近いインタビュー、インタビュアーは古川日出男。これは面白い企画ですね。『1Q84』から村上春樹を読み始めた人にも面白い内容だと思います。(『聖家族』がまだ読み終わらない。ごめんなさい。)

村上春樹は、小説家になったきっかけの話を何度もしているけど、その事を『エピファニー』と表現して、それを『僕の人生に起こったことの中では一番素晴らしい出来ごと』とまで断言でしているのは、僕が覚えている限りではない。『一番素晴らしい出来事のうちのひとつ』ではなくて、『一番素晴らしい出来ごと』という言い方がなされているのは。そして、その時の感覚が、60歳になるまでありありと残っているって、これは本当に素晴らしい出来事なんでしょう。やはり、この人にとって書くことは救いなんでしょう。本当に。多分奇跡は人生の中で何度かは起こるんだろうけど、それを大事にして生き続けられるかどうかのが大切なんて言うとちょっとアレだけど、それは穿らずに信じる価値があるとは思います。

インタビュー自体は、長年のファンにとってはそれ程目新しい事を言っている内容ではないけれど、面白かった。

あと、ジョージ・オーウェルの『象を撃つ』が興味深かった。オーウェル読んだことなかったけど、『一九八四年』も新訳が出ているし、読んでみようかな。

今や雑誌なんて、殆ど読まないけど、『モンキービジネス』は唯一追っかける気になる雑誌です。

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