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体の贈り物 (新潮文庫) 体の贈り物 (新潮文庫)
Rebecca Brown 柴田 元幸

新潮社 2004-09
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レベッカ・ブラウン初読。

感動的。あまりに感動的な物語。

というと陳腐に聞こえる昨今だけれども、そうは言っても、大きく心を動かす物語の本質が陳腐になっている訳ではない。ただ、ある種の逆説を通してからでないと、プリミティブな感動を表明することは、ダサいというのが時代の文脈の様だ。僕なんかは、そっちのがよっぽどダサいと思うけど、こういう事言うと角が立つね。

オムニバス形式の短編集で、主人公はエイズ患者の世話をするホームケア・ワーカー。彼女と患者達の交流を・・・。と書いてみると、なんか湿っぽくなるが、まあそういう話。訳者の柴田元幸氏も書いているけど。

要するに時代の文脈に乗っかってしまう訳で、その湿っぽさを意図的・かつ・技巧的に排してあげないと、なかなか人は物語の中にスッと入っていけない。

そういう意味で、この小説はよく出来ていて、ハードボイルドな描写に作者の力が入っている。主人公は、患者との交流の中でセンシティブになり、ナイーブになっていくが、いつもそれがギリギリの所で止揚されている。そして、その止揚されたエネルギーが、贈り物という形で、主人公の中で結晶する。

でも、そんな風にハードボイルドに止揚された彼女の心は、仕事を続けることが出来なくなってしまう所まで行く。結局、贈り物が自分の中に溜まっていく事に耐えられなくなる。贈り物をくれる人はみな死んでしまう訳だから当然だ。ただ、それと平行して、前半の小さな哀しみや喜びが、後半で大きな感動としてうねり始め、説得力が生まれてくる。哀しいけれども温かい、静謐な感動がやってくる。

そんな魅力的な一冊。
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