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久しぶりの映画エントリ。

おくりびと。

モントリオール世界映画際でグランプリを受賞した事で話題の様でだが、非常に良い映画だった。素直にいい映画と言える部類のいい映画。深読みなし。

プロのチェロ奏者を目指していた主人公の小林大悟(本木雅弘)だが、ある日突然、所属していたオーケストラが解散。大悟は、自分の才能の限界に見切りを付け、妻の美香(広末涼子)と実家の山形に帰る事に。そこで新たな職を探す大悟だったが、「旅のお手伝い」という文句と高給に惹かれ面接に向かった会社の業務内容は、納棺だった・・・。

オープニングは、納棺の儀式がいきなり流れる訳だが、まず観客の心をぐっと掴むという意味でこれは素晴らし演出だった。僕は、祖母と祖父で2回葬儀を経験しているけど、こんな納棺の儀式はなかった。どうやら作中のは古式納棺の儀と呼ばれるものらしくて、通常遺体の処置(湯灌)は病院などで行ってしまう模様。現代日本ではそういう部分もちゃんとシステム化しているという事か。どうりで見たことない訳だ。当然、観客の多くもこんな儀式は見たことないわけで、これは新鮮に写る。しかも、その儀式が何とも美しい・・・。

こういう儀式を見てハッとすると、一応僕も日本人で、日本古来の死生観みたいなもん持っているんだな~と思わされたりする。

観ながら思い出したのは、阿弥陀さまの五色の糸。これは小林秀雄の「私の人生観」(「栗の木」 講談社文芸文庫 所収)というエッセイにちょろっと出てくる。ちょっと引用。

今日でも、死人は北枕に寝かすという風習はあるが、当時の人(※1000年位前)は、臨終の覚悟をする為に北枕して寝たのです。顔を西の方に向け、阿弥陀様の像を安置して、阿弥陀様の左の手に五色の糸をかけ、その端を握って浄土の観を修したのである。

情景を思い浮かべるだけでも、かなり文学的に美しいですね。これは。

この映画とは直接関係ない話ではあるけれども、死に際しての儀式には、美しいと感じさせる様なものが昔はもっと沢山あったのかもしれない。現代の葬儀が、そのうちどれだけ引き継いでいるかのは知らんけれども。

また、こういう日本人の美しい死生観を描いた映画が、海外で高い評価を受けるって事の意味を考えると文化って言葉の意味も肉付け出来る気がするね。

もう一つ、この映画で素晴らしかったのは、初めての遺体(死後二週間経過の腐乱死体)を扱って、そのショックで狼狽えて自信をなくした主人公が、実家の押し入れから子供時代に使っていたチェロを引っ張りだしてきて弾くシーン。自分の音楽では人を喜ばす事は出来なかったけど、自分を慰める為には音楽を奏でる事は出来るって素敵ですね。

とにかく良い映画です。オススメ。

追記:
内容的には湿っぽそうな映画だけど、山崎努と本木雅弘の掛け合いがコミカルで、劇場は終始笑いが絶えない感じだった。こういう雰囲気 醸し出せるのは山崎努という俳優の人徳。それと、美しい死生観だけじゃなくて、ちゃんと「穢れ」みたいな問題をも扱ってます。職業差別に関する描写は、 田舎という事を鑑みても、ちょっとやり過ぎだけど、まあ。

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