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ぼくは猟師になった
ぼくは猟師になった 千松 信也

おすすめ平均
starsワナ猟を始めの一歩から垣間見て
starsまさしく狩猟生活の美学です。
stars猟をしたことの無い日本人は必読
stars猟師の世界を通じて食を考える
stars序盤からくらいつきました

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面白くて一気に読んだ。

33歳にして8年目の猟師生活を送る著者の生活のディティールがいちいち興味深い。ワナで仕留めた獣類をさばく手順が写真入りで、細かく説明してあるとことか。安易だけど、読み終わって、ちょっと猟師になってみたいなって思わせる。そういう魅力がシンプルな文章で伝わってくる。

著者は僕よりも6歳程年上だが、子供の頃の風景はとても良く伝わってきた。いわゆる”町の中の田舎”というのは、20年位前は辛うじて残っていて、確か小学校に入るまでは、僕の実家も蒔風呂だったし、河原で虫をとったり、沢で蟹とったりなんて事はやっている。庭に蛇がいたりとかも普通にあった。そういう記憶が掘り起こされた。

何が新鮮かっていうと、著者の視線が常に自然物に向いている事。文章の殆どが自然物に対する著者の考察で、それがなんとも面白い。猟師として成長する為には、当然自然のディディールが読めるようにならないと話にならない。初めのうちは、そういうディティールが読めないが、次第にけもの道が読めるようになったり、獣の行動パターンが分かるようになっていく。そういう過程を読んでるほうも追体験しているようで引き込まれる。

あと、なんと言ってもイノシシの肉とが本当に旨そうだった。

著者はあとがきで、自身の狩猟生活をこんな風に振り返る。

七度目の猟期を迎えて思ったのは、やはり狩猟というのは非常に原始的なレベルでの動物との対峙であるが故に、自分自身の存在自体が常に問われる行為であるということです。地球の裏側から輸送された食材がスーパーに並び、食品の偽装が蔓延するこの時代にあって、自分が暮らす土地で、他の動物を捕まえ、殺し、その肉を食べ、自分が生きていく。そのすべてに関して自分に責任があるということは、とても大変な事であると同時にとてもありがたいことだと思います。逆説的ですが、自分自身でその命を奪うからこそ、そのひとつひとつの命の大切さもわかるのが猟師だとおもいます。

「僕は猟師になった p221~222」

去年は、食品偽装が大ブームだったけど、それは自分の食べるものに関して、みんな責任を放棄しているんだから仕方がないのでは思っていた。偽装業者を擁護する訳じゃないけど、「文句があるなら食うなよ。」と言われればそれまでだと思うし。自分の命を支えるものを、他人に任せているんだという事を消費者が見つめ直さない限り、この問題な多分なくならないだろうとも思う。だから著者の生活にある部分では憧れてしまうのだろう。

といってもみんなが猟師になれる訳はない。ただ、自分の食を守ることは何も山の中に入らなくても出来る。たとえば、豆腐を近所の豆腐屋で買う。信頼出来る肉屋で肉を買う。それだけでも全然話は違ってくるはずだろう。

もうひとつ思ったのは、著者が狩猟会の人達や、猟師仲間と話す話題。あそこの山がどうだとか、あの鳥の名前は何だとか、そういう事が話題の中心で、人間関係の事は殆ど話題にならない。そういう生活をしていれば当然だろうが、自然が話の中心で、四季ごとにそのディティールが変わっていくから話題にも事欠かない。これは、都市生活者には多分分からない感覚だろう。普通に都会で暮らしていれば、自然の話題なんで天気位のものだし。

コミュニュケーション能力なんて言葉は都市生活でしか意味を成さない言葉で、自分が思った事を正確に伝えるだとか、相手の気持ちを推し量るとかが、技術に成らざるを得ない。相手と常に一対一で向き合わなければならないから、その緊張がストレスになったりもする。でも相手との間に自然が入る事で、相手と直に向き合うのではなく、動物や植物の話をすることで相手の事が分かったりする。っていうか日本人は古くからそういうコミュニケーションをとってきた。歌や俳句、連歌とかいうのは、基本的に自然物に気持ちを託す形式をとっていて、日本人の世界観がよく表れている。

話が、ちょっと脱線しすぎた。

ともかく、面白い本だったので、是非色んな人に読んでもらいたい。
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