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シッコ [DVD]
シッコ [DVD] マイケル・ムーア, マイケル・ムーア

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今更シッコを見返す。

アメリカの健康保険制度が端的に言って「ひどい」状況である事は、別に今更にここで説明する必要もないんだけど、

HMO - Wikipedia

一応それなりに成熟した国民皆保険制度がある日本ではまあ話題にはならないから知らない人も多いかもしれない。当たり前に享受できている事が、当たり前じゃないという事に気付く為には、当たり前じゃない状況に身を置いてみるのが一番だが、わざわざ病気になって、健康の有り難さを認識しようとする人はそうそういないから。

偉そうな事言ってるが、僕もアメリカの健康保険制度の「ひどい」状況を知ったのは、人気医療ドラマ「ER」からである。医療費が支払えない為に治療を受けられない患者というのは、頻繁に用いられる設定だった。

という訳でアメリカの健康保険制度は「ひどい」。この作品は、その「ひどい」状況をなんとかしたいと思っているマイケル・ムーアのドキュメンタリー。

序盤は、そんな「ひどい」医療制度の被害者達のインタビューから、健康保険制度を民間企業に任せる事の問題点に焦点が当てられている。保険会社は、病気や怪我をした加入者に難癖をつけて、支払うべき医療費を如何にして支払わないかにしか関心がない。まあ営利を追求するのが株式会社の存在理由(資本主義的には)だから、これは当然と言えば当然の姿だが、それで命を落とす加入者は報われない。。。

こと医療(や教育)という分野に関しては、資本主義の原理は導入しない方がいい。それがこの映画の一つのテーマでもある。医療なんてそもそも営利を生み出すものではない。だって消費者たる患者は皆出来れば病院なんて行きたくないのだから。皆が健康である事が医療の究極の目標であるとすれば、それが達成された時には医療の存在価値はなくなるのだから。そこに無理に金儲けを持ち込もうとすれば、医療制度が歪になっていくのは自明の理だ。消費者たる患者から金を巻き上げようとすることは、患者に、金と命を天秤にかけろと言っているに等しい。だから殆どの国では保険制度が政府主導で運営されているのだ。そこでは如何にして金を儲けるかという事ではなく、助け合いの精神こそが意味を持つ。

中盤では、そういった政府主導の医療制度が進んだ西欧諸国(カナダ、イギリス、フランス)の実例が紹介される。ここらへんは、一応国民皆保険制度が整っている日本人が観ても衝撃を受ける。国保(国民健康保険制度)だと、たいてい自己負担金は3割だが、これらの国の医療費は基本的に全てタダだ。それに、病気や怪我で働けない期間の保障も手厚い。特にWHOのランキング一位のフランスは凄かった。

しかし、この映画で一番衝撃を受けるのは終盤だ。9.11で助け合いの精神を見せた救助スタッフやボランティアは、救助作業の際の有害粉塵の後遺症に悩み、高額な医療費の為、まともな治療を受ける事も出来ない。ムーアは、そんな彼らを(アメリカが、最も憎むべき人物のひとりカストロが作りあげた社会主義国)キューバへ連れて行く。しかし、そのキューバの医療制度は、アメリカを遙かに凌いで充実してた。肺の病を抱えた女性はアメリカでは120ドルもしていた薬が、たった5セントで買えたことに涙を流す。その後救助スタッフ達は、キューバの病院でタダで治療を受ける。受付で聞かれるのは名前と生年月日だけ。

ここで話は「チェ 28歳の革命 / 39歳別れの手紙」に連想する。

充実した医療制度は、チェ・ゲバラが目指したものの一つでもあった。それは、フィデル・カストロによって実現された訳だ。キューバの社会体制を支持する訳ではないし、経済的な問題で国民の生活は逼迫している。でも、それはチェ・ゲバラが見つけようとした未来の一つの形である事もまた事実だ。読み書きが出来て、それによって職業を得ることが出来、弱者に対しては社会の包摂性が保たれている。それは、何々主義とか仰々しい理想ではなくで、チェ・ゲバラが持っていた素朴な気持ちから来るもののように思える。

アプローチは違うかもしれないが、マイケル・ムーアのスタンスも同じ所にあると思う。「病気や怪我で苦しんでいる人間に助けが差し伸べられない(逆に金をむしり取ろうとする)制度なんて間違っているじゃないか。」この映画の基本的な主張はそれだけだ。心ある人ならこの主張に普通は反対しないだろう。そういう人としてのプリミティブな気持ちが足りなくなっている事が(そういう気持ちがお金というインセンティブが強くなりすぎた事で失われてきた事が)資本主義社会が今抱えている問題の源泉だと思う。
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